技術士とは、さまざまな技術の分野ごとで、国が認めて登録された技術者であることを示す国家資格です。「技術士法」という法律が、技術士を「技術士の名称を用いて、科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務を行う者」と定義しています。技術士として国に登録している人は、平成27年度末で10万4千人弱です。それぞれ専門とする技術分野に対応して、電気電子、機械、化学、建設をはじめとする21の技術部門が設けられており、技術士を名乗るときは自らが属する技術部門を必ず表示する決まりです。

技術士制度を所管する文部科学省のホームページに、技術士の制度と定義が載っています。それによると、技術士制度は「技術コンサルタントの健全な発達を図るための国による技術者の資格認定制度」とあります。国は所定の試験に合格して登録した人に技術士の称号を与えることにより、「その人が科学技術に関する高度な応用能力を備えていることを認定する」というものです。
技術士法によると、技術士は「科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務を行う者」と定義されています。技術士資格は「科学技術の応用面に携わる技術者にとって最も権威のある国家資格」(上述の文部科学省ホームページによる。)と位置付けられています。

詳しい統計を見つけられなかったので、10万4千人のうち何割程度の技術士が事務所の看板を掲げて営業しているか把握していませんが、それほど大きな割合ではないと推測されます。技術士の大多数は企業(それも中規模以上、多くは大企業)に属し、企業内技術士として活動しているようです。

技術士試験は、決してやさしいものではなく、単に技術的な知識の有無を問う試験でもありません。受験者の実務経験の深さ(技術的成果だけでなく、QCD的に見たプロジェクトの管理実績や成否など)が評価されます(対照的に弁理士の試験は、主に知財関連法に関する知識を問い、実務経験の深さを問うものではありません。)。国家資格の試験としてはかなり難しい部類に属すると思います。にもかかわらず、技術士を名乗って自営する人の割合も、社会的な知名度も、試験の難しさに見合って高いとは決していえない状況にあります。

一定の専門分野で優れた実績を積み重ねた技術士が、その分野では技術コンサルタントとしてよく知られ活躍していますが、技術的な専門分野は他の士業(法律、会計、労務など)の取り扱い分野に比べて一般にはなじみが薄いものになりがちで、その辺りが社会的な知名度に影響しているかもしれません。

しかしながら技術士は、社会的にもっと活用されてよい人的リソースです。「科学技術に関する高等の専門的応用能力」とは、科学技術を現実世界のいろいろな事象(これにはビジネスも当然に含まれます。)にあてはめて、そこに生じるさまざまな問題を解決へ導く能力といいかえることができます。現代のビジネス(もちろん中小・ベンチャー企業も含めて)を取り巻く複雑で多岐にわたる諸事情には、コスト、環境対策、安全、信頼性など、技術の中身と密接に関わる問題が山積みです。これらの問題には、法律、会計、労務などの専門家の助言が場面によって役に立つとしても、技術と無関係には片づけられない領域が必ず含まれます。このようなときに社外の経験豊富な技術コンサルタント(とりわけ、国家資格に裏付けられた技術士)の活用を検討することは、社内リソースに余裕の少ない中小・ベンチャー企業にとって特に一考の価値があると思われます。