新制度では、データの不正利用や不正流通の一定のパターンを不正競争防止法の不正競争行為に追加し、被害者に対する救済措置を設けることが考えられています。その原則は、
(1)契約に基づく自由な取引を前提とする、
(2)通常の正当な事業活動を阻害しない、及び
(3)悪質性の高い不正利用・不正流通に対して必要最小限の民事救済を導入する、
こととされています。

これらの原則に基づいて追加される予定の不正競争行為は、現行法の営業秘密に関する不正競争行為の類型化にならって、取得が一次的(もとの所有者・提供者から直接に取得)なものか、二次的(一次取得者からさらに取得、これを「転得」という。)以降のものかに分けて定められます。また、限定的な外部提供性の下で正当に取得した(法律用語で、「権原がある」という。)かそうでない(同じく、「権原がない」という。)かに分けて定められます。さらに、二次以降の転得者がそれまでの不正な経緯を知っているかいないか、又は主観的な意図(不正の利益を得る目的又は提供者に損害を加える目的(図利加害目的)等)の有無に分けて定められます。

まず一次取得者の不正競争行為については、以下の(ⅰ)~(ⅲ)のように考えられています。
(ⅰ)権原のない(データ提供者との契約関係がない)者が、不正アクセスや詐欺等の手段によりデータを不正に取得、使用又は第三者に提供する行為。
(ⅱ)権原のある者が正当な契約等に基づいて取得したデータを、横領・背任的に使用する行為(契約で認めた範囲を超えてデータをコピーする等が考えられます。)。
(ⅲ)権原のある者が取得したデータを、図利加害目的を持って第三者に提供する行為。

上記の(ⅰ)の不正取得が最も典型的で、提供者との契約がないのにデータを持っていれば、それだけで当てはまりそうなパターンです。(ⅱ)及び(ⅲ)の場合は、データを持っていること自体は正当なので、横領・背任的な行為の態様や主観的な図利加害目的の立証が必要になります。

次に、二次以降の転得者の不正競争行為については、以下の(ⅳ)及び(ⅴ)のように考えられています。
(ⅳ)それまでの経緯に不正(上記の(ⅰ)~(ⅲ)のいずれか)があったことを知ったうえでデータを取得し、使用又はさらに別の者に提供する行為。
(ⅴ)それまでの経緯に不正があったことを知らずにデータを取得して事後的に知ったうえで、権原の範囲(転得者にデータを提供した者との間の契約等の範囲)外で当該データを使用又はさらに別の者に提供する行為。

(ⅳ)及び(ⅴ)については、転得者が不正の経緯をデータ取得の事前に知っていたか否か、がポイントになります。前段階までに不正競争行為を経て転得されたデータでも、転得者が不正の経緯を知らずに入手して使用又は別の者に提供する行為は不正競争行為にならない等、原則の(1)や(2)(契約自由の尊重、データを活用する事業の促進)を反映させた規定ぶりになるようです。

以上のほか、追加される不正競争行為に対する民事救済として、差止請求や損害賠償請求の措置が導入される見通しです。また、現行法で影像、音、プログラムに限定して定める技術的制限手段の対象を、コンピュータで処理されるデータにも拡張する等の改正が見込まれます。
各種データの事業への活用や取引が、企業規模の大小を問わず幅広い産業分野に及びつつあります。中堅中小企業の立場からも、近々予想される不正競争防止法の改正には注意が必要に思われます。