特許を出願してから3年以内に審査請求しなければ、特許庁は審査をしてくれません。この審査請求は、国に支払うお金(いわゆる印紙代)がバカにならないので(請求項の数が8の場合15万円)、とりわけ中小・ベンチャー企業にとっては悩ましい壁でしたが、個人・中小企業が所定の手続をすればこれを3分の1に減額してくれるという制度が2014年から運用されています(従業員数等の条件があるので、特許庁ホームページの確認が必要です)。
この制度は平成30年3月までの期限付きで、そろそろ終わります。中小・ベンチャー企業で審査請求するつもりではあるがまだ請求していない特許出願がもしあれば、一考の価値があります。また、第10年分までの特許料も同様に3分の1に減額可能ですから、既有の特許権の年金支払いについても前倒しを検討する価値があります。手続には、軽減申請書と証明書(例えば、出願人会社の社長が自書するものと、法人税確定申告書別表第2の写し)が必要です。手続を代理人に依頼すると代理人費用が若干発生しますが、請求項数が多い出願の審査請求や複数年の特許料納付の場合は十分モトがとれます。
この減免制度に加えて、早期審査制度も利用価値の高い制度です(この制度は従前から運用されており、期限も切られていません)。従業員数300人以下又は資本金3億円以下(製造業の場合)の企業の特許出願には、適用可能です。早期審査請求の手続では先行の公知文献との対比を示す必要がありますが、出願のときの明細書にきちんと書いてあればそれを引用すれば済むので、大げさな書類にはなりません。
早期審査請求が認められると、平均2.5か月程度で最初の拒絶理由通知が来ます(どんな出願でも、たいてい1回は拒絶理由通知が来ます。これが来ないものは、よほど権利範囲が狭いか、およそ奇想天外で類似の公知文献の探しようがないか、を心配した方がよいでしょう。)。拒絶理由への対応がそう難しくなければ、特許査定を受けるまでにそれほど時間がかかりません。出願と同時に早期審査を請求すれば、出願から6~7か月で審査結果(特許査定とは限りませんが)を得ることも可能なので、中小・ベンチャー企業が小回りを利かせて脚の短いビジネス展開を図るうえでは格好の制度です。また、期間1年の優先権を主張して外国出願することを考えるとしたとき、国内よりも多額の費用がかかる外国出願の是非の判断は悩ましいところです。このような場合、優先権の期間1年のうちに国内で特許査定が得られていれば、大きな判断の助けになります。
審査請求や特許料の減免制度は上述のようにまもなく終わるため、中小・ベンチャー企業としては可能であれば駆け込みで減免の機会を得たいところですが、より広い産業政策上の視点からは、知財の保護や活用のすそ野を広げるのにきわめて有用なこの制度の延長や又は類似の制度の再設定が検討されるべきものと考えます。