平成29年度補正予算のものづくり補助金において「企業間データ活用型」という事業タイプが新設され、複数の企業どうしがデータの共有を通じて連携して付加価値を生み出す活動に手厚い補助が予定されていることをご紹介しました。ものづくり補助金は、国(経済産業省)の平成29年度補正予算及び平成30年度本予算の主要テーマである「中小企業等における≪生産性革命≫の実現」の一環です。
余談ながら、≪生産性革命≫というのは、最近の政権のキャッチコピーである≪働き方改革≫を裏返しにした経産省版のように思えます(≪働き方改革≫そのものは厚労省マターだから)。
≪生産性革命≫のテーマには、ほかに、地域中核企業・中小企業の連携支援(いわゆる新連携)が平成30年度本予算の方に含まれています。この事業は我が国経済の底上げを図るため地域経済を牽引する地域中核企業(中小企業、中堅企業)と、他の中小企業、大学・公設試等の連携を促進し、地域に波及効果を及ぼす取組を重点的に支援するというものです。
事業イメージには次の3タイプがあります。
(1) ものづくり・サービスの開発: 法定の計画認定等を受けた中小企業が、大学・公設試等と連携して行う研究開発、試作品開発及び販路開拓等への取組の支援。補助上限額はものづくり4,500万円、サービス3,000万円。
(2) 市場獲得: 法定の計画承認を受けた事業者等が、中小企業と連携して行う、戦略分野(先端ものづくり(医療機器、航空機、新素材等)、地域商社、観光等)における市場獲得に向けた取組の支援。補助上限額は原則5,000万円。
(3) 新事業創出に向けた一環支援: 地域中核企業等による新事業のための体制整備から、事業化戦略の立案、販路開拓、市場獲得まで、事業段階に応じた支援。
(各事業タイプには、専門家による支援などの条件が付くので、改めてご確認下さい。)
この事業は予算総額約160億円で、1件あたりの補助上限額がかなり高額ですから、ものづくり補助金に比べるとかなりハードルが高いと予想されます。それはさておき、こちらのキーワードも「連携」です。連携するメンバー間のデータの共有や利活用は、うたい文句には見当たらないものの、複数の参加企業・機関が連携して先端的な事業に取り組むには必須の要件になるでしょう。
このように国の中小企業支援策を見てくると、「連携」、「データ共有」などのキーワードが抽出されてきます。複数者(社)間でのデータ共有に関わる法的保護の枠組みを与えるため、不正競争防止法の改正が予定されていることは既述の通りです。
以下ではこのトピックを、特許の側面から考えてみます。複数の企業等の間でデータを共有する仕組みや、その仕組みを活用する事業を裏付ける技術として、どのようなものが注目され権利化されているかを俯瞰してみたいと思います。
ごく初歩の試みとして、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)の特許・実用新案テキスト検索を用い、特許公報のみを対象として「要約+請求の範囲」に「データ」と「企業間」の2語が共に含まれる文献を検索しました(出願日を2000年1月1日以降に限定)。すると、36件の特許がヒットしました(同じ条件で特許公開公報だけを検索すると、ヒット件数は約200です。)。少ない母数を強引に分類した一つの結果を、以下に挙げます(この分類はIPC分類等によらず、主観によるものです。)。
(a) ネットワーク自体の改善、改良、セキュリティ対策等 11件
(b) ビジネス、技術、知財情報等の収集、分析、利用、交換 9件
(c) 決済システム、財務分析、計画等 8件
(d) サプライチェーン、物流の管理等 5件
(e) その他 3件
(この項続く。)