平成29年度補正予算の「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業」(通称「ものづくり補助金」、予算総額1,000億円)の事業タイプは、次の3通りに分かれます。
(1) 企業間データ活用型
複数の中小企業・小規模事業者が連携して互いにデータ・情報を共有し、 連携体全体(10者(社)まで)として新たな付加価値の創造や生産性の向上を図るというものです。経産省の説明資料には、連携体がデータ等を共有・活用して受発注、生産管理等を行い、共同して新たな製品を製造したり、地域を越えた柔軟な供給網を確立して新たなサービス提供を行ったりする例が挙げられています。
補助金の上限額は、連携体に参加する1社あたり1,000万円で、さらに200万円×参加者(社)数分の額を連携体内部で配分可能とされています。補助率は2/3です。設備投資を行うことが要件になるかどうかは、まだ不明です。
(2) 一般型
中小企業・小規模事業者が行う革新的なサービス開発・試作品開発・ 生産プロセスの改善に必要な設備投資等を支援するというものです。補助金の上限額は1,000万円、補助率は1/2です(一定の要件を満たせば例外的に2/3にされる)。このタイプでは設備投資を行うことが要件になりそうです。
(3) 小規模型
小規模な額で中小企業・小規模事業者が行う革新的なサービス開発・ 試作品開発・ 生産プロセスの改善を支援するというものです。補助金の上限額は500万円、補助率は小規模事業者(製造業の場合従業員20人以下、商業・サービス業の場合従業員5人以下)では2/3、それ以外は1/2です。このタイプでは設備投資が要件に含まれません。
(1)のタイプは、補助金額、補助率ともに最も手厚く、まさに”Connected Industries”の中小企業版として国が力を入れていることがうかがえます。しかし応募する側としては、少なくとも半年程前から連携する各社間で計画を練っておかないことには、巷間いわれるように2月-3月あたりが応募の山場だった場合には到底間に合いません。
このタイプは複数社が連名で応募し、採用されたら共同で事業を進めることになるので、各社間の役割分担や責任範囲を十分に詰めて契約書を交わしておくことが必須です。また、共有データの法的な保護については不正競争防止法の改正が見込まれますが、法制化及び施行はしばらく先になるので、この段階では当事者間の守秘義務契約で対応することになります。それやこれやで、このタイプは国の意気込みを示すものだとしても、応募する中小企業から見たハードルはかなり高いものになりそうです。
ものづくり補助金が来年度以降も継続するかどうかは予断を許しませんが、中期的には「複数者(社)によるデータの共用・活用」という産業政策上のテーマがかなりの高確率で重視されることになりそうな点は、頭に入れておいてもよいでしょう。
(2)のタイプは、1社でも単独で応募できるいわば従来型です。設備投資を含む計画を立てている多くの中小企業にとっては、このタイプが主戦場になりそうです。ただし補助率は1/2にとどめられたので、資金計画面では注意を要します。
なお、補助率2/3を適用される例外として、平成30年通常国会提出予定の生産性向上の実現のための臨時 措置法(仮称)に基づく先端設備等導入計画(仮称)の認定又は経営革新計画の承認を取得して一定の要件を満たす者が挙げられています。後者は中小企業等経営強化法に基づく制度で、中小企業が新事業の数値目標を具体的に定めた経営革新計画に都道府県の承認を得ていれば該当します。前者は生産性向上に資する設備導入に関して自治体の承認を受けるという内容ですが、なにぶん未施行の制度なので、今回の応募とはタイミングが合わないように思われます。
(3)のタイプは、設備投資の計画がなくても応募が可能です。小規模事業者は補助率2/3の適用が受けられるので、狙い目といえましょう。一方で、応募書類を作ったり採択後に補助事業を進めたりするには、それなりの人的リソースの確保を必要とします。ただでさえ人手不足の昨今、小規模事業者にはかなりの負担です。社外の専門家を活用することも、検討に値すると思われます。